01Short Story

【特典SS】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る
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【特典SS】現代忍者は万能ゆえに異世界迷宮を一人でどこまでも深く潜る

 迷宮探索を終えた俺は、漂人局の扉をくぐる前にもう一度自身の装備をチェックする。

 問題は無いように見えるな。
 ……よし。

「戻ったぞ。鑑定を頼む」

「シュウさん。ご無事で……」

 漂人局の扉をくぐるとさっそくエリカが出迎えてくれる。
 いつも思うのだが、この漂人局にはエリカの他にも職員は複数いるはずなのに俺が迷宮から戻ると必ずエリカが居るのはどういう寸法なのだろうか……?

「鑑定ですね。承りますが……その前に」

 ……来た。
 俺は表情を崩さないように努めて冷静を装いながら、探索の成果をカウンターに載せてエリカに向き直る。

「ふん……ふん……」

 内心の緊張を抑えながら立ち尽くす俺の周囲を、エリカがゆっくりと全周回りながら舐めるように観察していく。

 大丈夫……なはず。

「シュウさん。ここ……」

 するとエリカは俺の背後から声をかけながら、綿甲の背中の一部をツンツンと指さしてくる。
 ……そこは確かに、乱戦の中で魔物の攻撃を受けた部位だが。
 しかし刃や牙で切り裂かれたわけでもなく打撃を受けただけに過ぎないので、見た目の変化は無いと思うのだが……まさかな?

「……ここだけ綿の表面がほんの少しほつれて、なにかに強く擦れた形跡があります」

 ぐぐぐ……どうしてそんなに観察眼が鋭いんだ。
 迷宮から帰還する前に一度綿甲を脱いで入念に確認したというのに、攻撃を受けた俺自身でも痕跡を見分けられなかったというのに。

「鎧を脱いでください」

「エ、エリカ……それはまた今度に……」

「ダメです! 脱いでください」

 俺は観念してその場で綿甲の帯を解く。
 鎧下姿になった俺に対して、エリカは顔を近づけてさらに鎧下を捲り上げてまで入念なチェックを始めてしまう。

「やっぱり……打撲の跡があります。 ほとんど治っていますけど、ドロテアさんのポーションですね?」

「お、おいエリカ……俺は汗臭いから、そのくらいにしたらどうだ」

 エリカはほとんど俺の身体に顔をくっつける勢いで凝視しているので、これ以上のボロが出ることを恐れて俺は気が気でない。

「クンクン……たしかに汗の匂いもしますが、それよりも……これは、血? 他にもどこか負傷しましたね?」

 うぐぐぐ……わざわざ入念に身体を拭ってから来たというのに、エリカの麻薬捜査犬並みの嗅覚を誤魔化すことができない。

「もっとちゃんと調べます! シュウさん、脱いでくださ……」

「ちょっと~? イチャイチャするのは別の場所にしてくれるかしら」

 と、そこでカウンターの奥から別の職員の声が聴こえて来た。
 見上げるとそれはエリカの同僚の女性で、名前は何と言ったか思い出せないがともかくエリカと仲の良い人物だったと記憶している。

「そ、そんなんじゃないわよ! 茶化さないで」

「仮眠室が空いてるわよ。そこでごゆっくり……ご休憩は2時間かしら? うふふ、それとも朝まで?」

「セレナ!」

「キャー!」

 エリカに掴みかかられて同僚の女性はわざとらしく悲鳴を挙げているが、この二人はしばしばこうしたやり取りをしているので俺も見慣れつつある。

 なんにせよ、セレナと言ったか?
 もしかしたら彼女がこの場の空気を混ぜっ返して、それで俺が助かる可能性もあるのでは……

「……ともかく! 仮眠室が使えるのでそこで脱いでください」

「や~ん、エリカったら大胆。いつもアナタから脱がせるの?」

「 怒るわよ、セレナ!」

 ……いや、これはエリカを激昂させるばかりで俺のアシストにはなっていない。
 しかもなんだその、こちらに向かって片目を閉じて『好アシストでしょう?』と言わんばかりの仕草は? 逆効果もいいところなんだが。
 
「ではでは、お楽しみくださ~い」

「セレナ!!」

 こうして俺は仮眠室に押し込まれて、なぜか頬を紅潮させたエリカから入念な身体検査を受け、もちろんその後は予言通りキッチリ2時間の叱責を受けることになるのだった。