01Short Story

【特典SS】 魔法と願い
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【特典SS】 魔法と願い

 ヴァルハラの一員になってからも、私は魔法使いとしての鍛錬を怠らない。
 むしろ重要な役割を与えられたからこそ、日々の訓練にも気合が入る。
 私は眼をつむり、自らの魔力に集中する。
 静かな川の潺(せん)のような流れを維持し、魔法発動時に消費する魔力量を極限まで軽減する。
 長く魔法を使えるように。
 より洗練された魔法を行使できるように。
 集中して、集中して、魔力の感覚だけに身を任せる。
 外敵のいない安心できる場所での訓練だったから、私は彼の接近に気づかなかった。
 ふいに目を開けると。
「わっ! フレン様!」
「おっと、びっくりしたよ」
 それはこちらのセリフだと言いたくなった。
 目を開けたら目の前にフレン様の顔があって、今にもキスされそうなくらい近かったからだ。
 心臓がドクドクと濁流のような音を奏でている。
「眠っているのかと思ったよ」
「い、いえ、魔法の訓練をしていました」
「そうだったのか。確かに君は、毎朝欠かさず訓練をしていたね」
「ご存じだったんですね」
「俺も時間があれば体を動かすようにしているからね」
 フレンはそう言って大きく背伸びをする。
 よく見ると、少しだけ肌が汗ばんでいるのがわかった。
 走り込みでもしてきた後なのだろうか。
「それにしても、すさまじい集中だったね。俺の接近に一切気づかないなんて」
「す、すみません……」
「今のは何をしていたんだ?」
「魔力の流れをコントロールする訓練です。頭のてっぺんから指の先まで、流れる魔力を制御して、魔法をより効率的に放てるように」
 フレン様は納得したように小さくうなずく。
「効率化か。そういう訓練もあるんだね。魔法なら、もっと派手な訓練が多いと勝手に思っていた」
「地味ですよ。派手な魔法が目立つだけで、そうじゃない魔法もたくさんあります」
「不思議なものだな。魔法とはどうやって生まれたのか」
「諸説ありますね」
 魔法の起源は古く、未だ解明されていない。
 フレン様は私の隣に座る。
「最初に魔法を唱えた者は、どんな気分だったのだろうな」
「きっと願いが叶って嬉しかったと思います」
「願い?」
「はい。私は魔法とは願いだと思います。こうなってほしい。こうなったら嬉しい。誰もが思い描く理想を願い、それを実現する力……」
「願い……か」
 フレン様は小さく、かみしめるようにつぶやいた。
「オルトリアは何を願う?」
「そうですね。私は……この魔法で誰かが幸せになれますように……とか」
 少し格好つけてしまって、なんとなくはずかしかった。
 フレン様は優しく頬んで言う。
「ははっ、オルトリアらしいな」
 私らしい。
 そう言ってもらえたことが嬉しくて、自然と笑みがこぼれた。
 そうだ。
 私の魔法で、この人のような暖かな笑顔を守れますように。
 私はこれからも願う。